HDAC阻害剤とは、細胞の中にある“遺伝子のスイッチ”を調整する薬の一種です。私たちの細胞にはDNAがありますが、すべての遺伝子が常に働いているわけではありません。必要な遺伝子だけが働き、不要な遺伝子は休んでいます。この「どの遺伝子を働かせるか」を調整する仕組みの一つに、HDACという酵素があります。

HDAC阻害剤は、このHDACの働きを抑えることで、細胞の異常な状態を変える可能性があります。簡単に言えば、病気の状態を記憶してしまった細胞の“悪い記憶”をリセットするような働きが期待されています。がん、炎症、神経疾患、糖尿病など、さまざまな病気で研究されています。

糖尿病幹細胞研究では、HDAC阻害剤によって、糖尿病を続かせる異常な骨髄由来細胞の状態を整えることができる可能性が示されています。マウス研究では、インスリンとHDAC阻害剤ジビノスタットを一時的に使用することで、治療終了後も正常血糖が維持されたと報告されています。