
TARGETING DIABETES STEM CELLS FOR COMPLETE REMISSION
糖尿病の完全寛解を目指す研究
血糖値を下げるだけではなく、糖尿病を持続させる原因そのものへ。
現在の糖尿病治療では、血糖値やHbA1cを適切に管理し、合併症の発症や進行を防ぐことが極めて重要です。
一方で、血糖値を正常化しただけでは、糖尿病によって生じた細胞レベルの異常まで完全に元の状態へ戻るとは限らない可能性があります。
私たちの研究では、糖尿病によって異常化した造血幹細胞・骨髄由来細胞が、膵β細胞の再生や全身の組織修復を妨げ、糖尿病やその合併症を持続させる一因となっている可能性に着目しています。
研究チームは、この病態に関与すると考えられる異常な造血幹細胞群を、研究上「糖尿病幹細胞(Diabetes Stem Cells:DSC)」と位置づけています。
私たちが目指しているのは、血糖値を一時的に正常化することではなく、糖尿病を持続させる病態そのものへ介入することです。
糖尿病幹細胞は研究段階の病態概念であり、現在の糖尿病診断基準として確立されたものではありません。また、本ページに記載する治療候補、Biozipcode™、5-ALA等は、糖尿病の完全寛解治療として承認されたものではありません。
患者様は、現在処方されている糖尿病治療薬やインスリンを自己判断で中止・減量せず、治療については必ず医師にご相談ください。
FROM GLUCOSE CONTROL TO DISEASE MODIFICATION
血糖管理から、病態そのものへの介入へ。
糖尿病では、高血糖が続くことで全身の臓器にさまざまな変化が生じます。
研究チームでは20年以上にわたり、糖尿病における骨髄由来細胞の異常と、
- 膵臓
- 神経
- 腎臓
- 肝臓
- 血管
- 皮膚
- 腸管
- 骨
- 免疫系
など、多くの組織に生じる障害との関係を研究してきました。
その研究から、次のような病態モデルを考えています。
高血糖状態
↓
造血幹細胞・骨髄由来細胞に異常が生じる
↓
異常細胞が全身の組織へ移動する
↓
β細胞再生や臓器修復を妨げる
↓
糖尿病・合併症が持続する
私たちは、この悪循環そのものを断ち切ることで、糖尿病の完全寛解につながる可能性を研究しています。
EPIGENETIC MEMORY
分子標的から、細胞標的へ。
糖尿病幹細胞研究では、エピジェネティックな異常が重要な研究テーマとなっています。
エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列そのものを変化させずに、遺伝子の働き方を調節する仕組みです。
糖尿病モデルの異常な造血幹細胞では、HDACに関する発現異常が観察されています。
そのため私たちは、
高血糖
↓
造血幹細胞にエピジェネティック異常が生じる
↓
血糖値が改善しても異常な細胞状態が残る
↓
糖尿病の難治性につながる
という可能性を研究しています。
言い換えれば、細胞に残る「病気の記憶」を正常化することが、完全寛解への一つの鍵になる可能性があります。
BETA-CELL REGENERATION
β細胞を外から補うのではなく、本来の再生能力を取り戻す。
糖尿病治療において、インスリンを分泌するβ細胞の機能は極めて重要です。β細胞には一定の条件下で再生・増殖する能力があります。
しかし私たちの研究では、糖尿病状態で生じる異常な骨髄由来細胞が、膵島周囲の血管・再生環境に影響し、β細胞の正常な再生を妨げる可能性に着目しています。
そのため、β細胞そのものだけを治療するのではなく、β細胞が再生できない原因を取り除くという考え方で研究を進めています。
THE ROLE OF THE THYMUS
骨髄だけではなく、免疫システムも回復させる。
2023年のマウス研究では、完全寛解に胸腺機能が関与することも報告されています。
胸腺は、異常な細胞を識別・除去するT細胞など、免疫システムの形成に重要な役割を果たします。研究では、糖尿病によって胸腺にも異常が生じ、糖尿病幹細胞やその子孫細胞を十分に排除できない状態になる可能性が示されています。
そのため、完全寛解には、
骨髄の異常細胞への介入
+
膵β細胞の再生
+
免疫・胸腺機能の回復
が相互に関係している可能性があります。
THE THERAPEUTIC HYPOTHESIS
完全寛解に向けた治療仮説
私たちの現在の研究仮説では、糖尿病を高血糖だけでなく、その背景にある異常な細胞状態や再生機能の低下を含む病態として捉えています。そのため、完全寛解に向けた治療を「血糖の安定化」「異常な細胞状態への介入」「自然な再生能力の回復」という3段階で整理しています。
STEP 1
高血糖を安定化する

まずインスリン等によって血糖値を適切に管理し、新たな異常細胞が生じる環境を抑えます。
STEP 2
異常な細胞状態へ介入する

HDAC等に関連するエピジェネティック異常に介入し、糖尿病幹細胞と考えられる異常な細胞状態の正常化または除去を目指します。
STEP 3
自然な再生能力を回復させる

病的細胞による阻害が解除されることで、膵β細胞の再生や内因性インスリン分泌が回復し、治療終了後にも正常な糖代謝を維持できる状態を目指します。
FROM MICE TO HUMANS
次の課題は、ヒトで証明すること。
マウスで完全寛解が確認されたことは重要な研究成果ですが、それだけでヒトの糖尿病を治療できることを意味するものではありません。
EXPLORATORY HUMAN STUDY
ヒト末梢血での探索研究
研究チームでは、2型糖尿病患者と非糖尿病対照者の末梢血を用いた探索的pilot studyも行っています。
研究では、
非糖尿病対照:13名
2型糖尿病患者:14名
を対象として、研究上の糖尿病幹細胞候補とされる細胞群が解析され、糖尿病幹細胞候補と考えられる特徴を持つ細胞が観察されています。
BIOZIPCODE™ AND CELL-TARGETED THERAPY
糖尿病幹細胞だけを標的とすること
HDAC阻害剤は、糖尿病幹細胞だけに作用する薬ではありません。そこで私たちは、Biozipcode™による細胞標的化技術を利用し、糖尿病幹細胞をより選択的に標的とする治療の研究を進めています。
糖尿病幹細胞を認識するBiozipcode™候補に治療用分子を組み合わせることで、
- 標的細胞への薬剤送達を高める
- 正常組織への曝露を抑える
- 必要な投与量を最適化する
- therapeutic indexを改善する
ことを目指します。

5-ALA AS A RESEARCH CANDIDATE
5-ALAについて
株式会社バイオジップコードでは、糖尿病治療候補の一つとして5-ALAについても研究・検討を進めています。
5-ALAは、ミトコンドリアにおけるヘム合成やエネルギー代謝に関与する生体内物質で、糖代謝に関する複数のヒト臨床研究が報告されています。
一方で、現時点で5-ALAが糖尿病を完全寛解させることは証明されていません。また、5-ALAを確立されたHDAC阻害剤または糖尿病根治薬として扱うことも適切ではありません。
当社では、既存のヒト安全性・代謝関連データを参考にしながら、糖尿病幹細胞研究との機序的な関係を検証し、適切な臨床開発経路を検討する研究候補として位置づけています。

OUR GOAL
「一生管理する病気」から、
「治療終了後も良好な状態を維持できる病気」へ。
私たちが目指している「完全寛解」は、単に一時的に血糖値が下がることでも、治療薬を使用している間だけ正常値を維持することでもありません。
研究開発上の目標は、治療を終了した後にも、内因性の血糖調節機能が回復し、良好な代謝状態が持続することです。
そのためには、
血糖管理
+
病態を担う異常細胞への介入
+
β細胞再生
+
免疫機能の回復
+
バイオマーカーによる確認
を一体として研究する必要があります。









