
DIABETES REMISSION THERAPY
糖尿病根治治療候補
血糖値を下げるだけではなく、
糖尿病を持続させる病態そのものへ。
現在の糖尿病治療では、血糖値やHbA1cを適切に管理し、合併症の発症や進行を抑えることが重要です。
一方、株式会社バイオジップコードと共同研究者は、糖尿病によって生じた異常な造血幹細胞・骨髄由来細胞が、血糖値が改善した後にも残り、膵β細胞の再生や全身の組織修復を妨げる可能性に着目しています。
私たちは、このような病態に関与すると考えられる細胞群を研究上「糖尿病幹細胞(Diabetes Stem Cells:DSC)」と呼び、血糖値だけではなく、糖尿病を持続させる可能性のある細胞状態そのものへ介入する治療法を研究しています。
治療中だけ血糖値を正常に保つのではなく、治療終了後にも良好な代謝状態が維持されること。
それが、私たちが目指す「完全寛解」の考え方です。
現時点で、一般的な糖尿病診断基準や承認済みバイオマーカーとして確立されたものではありません。ヒトにおける細胞の同定、頻度、糖尿病との因果関係、1型・2型糖尿病における違い、合併症との関係、治療予測能などについては、さらなる検証が必要です。
WHY INSULIN ALONE MAY NOT BE ENOUGH
血糖を正常化することと、
病態を正常化することは同じではない可能性。
インスリンは、血糖値を下げるうえで極めて重要な治療です。
しかし私たちの研究では、糖尿病によって一度生じた異常な造血幹細胞・骨髄由来細胞が、血糖値を改善した後にも残る可能性に着目しています。
つまり、
高血糖を改善する
ことと、
高血糖によって形成された異常な細胞状態を正常化する
ことは、
必ずしも同じではない可能性があります。
この違いが、糖尿病が長期間にわたり持続する理由の一つではないかという仮説を検証しています。
PRECLINICAL EVIDENCE
マウスで報告された完全寛解
2023年、研究チームはSTZ誘導糖尿病マウスを用いた研究成果を『Communications Biology』に発表しました。
Complete remission of diabetes with a transient HDAC inhibitor and insulin in streptozotocin mice
この研究では、糖尿病マウスに対して、
インスリンによる血糖管理
+
HDAC阻害剤 givinostat
を一定期間組み合わせて治療しました。
その結果、治療終了後にも正常血糖が維持される結果が報告されました。さらに、内因性インスリン分泌の回復、病的な骨髄由来細胞関連変化の減少、異常な細胞融合の抑制などが観察されています。
この結果をdisease-modifying hypothesisを支持する前臨床シグナルとして位置づけています。一方、ヒトにおける有効性・安全性を示すものではなく、ヒトでの検証が今後必要です。
EPIGENETIC INTERVENTION
細胞に残る「病気の記憶」へ介入する。
糖尿病モデルの造血幹細胞では、HDACに関連する異常が報告されています。
HDACは、DNA配列そのものを変えるのではなく、遺伝子の働き方を調節するエピジェネティック機構に関係しています。
私たちは、
高血糖
↓
造血幹細胞にエピジェネティックな変化が生じる
↓
異常な細胞状態が維持される
↓
糖尿病や合併症を持続させる
という可能性を研究しています。
このため、糖尿病根治治療候補では、単なる血糖降下ではなく、異常な細胞状態を正常化することを重要な治療戦略の一つとして位置づけています。
BETA-CELL RECOVERY
β細胞そのものだけではなく、
β細胞が再生できる環境を取り戻す。
糖尿病では、インスリンを分泌する膵β細胞の機能が低下します。
一方、β細胞には一定の条件下で再生・機能回復する能力があります。
私たちの研究では、糖尿病状態で生じる異常な骨髄由来細胞が膵島周囲の血管や再生環境へ影響し、β細胞の正常な回復を妨げる可能性に着目しています。
そのため治療開発では、
β細胞を直接刺激するだけではなく、
β細胞が回復できない原因そのものを取り除く
というアプローチを研究しています。
IMMUNE & THYMIC RECOVERY
免疫・胸腺機能も完全寛解の一部として考える。
2023年のマウス研究では、治療による保護効果に胸腺機能が重要である可能性も報告されました。
胸腺は、T細胞をはじめとする免疫システムの形成に重要な臓器です。
この研究結果から、完全寛解は単純に膵臓だけの問題ではなく、
骨髄
+
免疫・胸腺
+
膵β細胞
+
全身の組織再生
が相互に関係する全身性の現象である可能性を研究しています。
EXPLORATORY HUMAN RESEARCH
ヒト末梢血を用いた探索研究
研究チームでは、2型糖尿病患者と非糖尿病対照者の末梢血を用いた探索的pilot studyも行っています。
非糖尿病対照 13名、2型糖尿病患者 14名について、Proinsulin、TNF-α、CD106などを指標とする細胞群を解析した探索データが示されています。
これらは、ヒトにおける糖尿病幹細胞研究を進めるうえでの初期的なデータですが、現段階では確立した診断法や臨床バイオマーカーではありません。
今後、より大きな患者集団での前向き検証が必要です。
HUMAN TRANSLATION
次に必要なのは、ヒトでの検証。
マウスで得られた完全寛解は重要な研究成果ですが、ヒトの糖尿病で同じ病態機序が成立することはまだ証明されていません。
特にヒトでは、
- 1型糖尿病と2型糖尿病
- 発症からの期間
- β細胞の残存機能
- インスリン抵抗性
- 年齢
- 合併症
- 免疫状態
- 使用薬剤
などによって病態が大きく異なります。
そのため、現在の重要な研究課題は、糖尿病幹細胞という研究上の細胞集団がヒトでも再現性をもって確認できるか、その変化が治療反応と関連するかを検証することです。

5-ALA RESEARCH
5-ALAを研究候補の一つとして検討。
株式会社バイオジップコードでは、糖尿病に関連する研究候補の一つとして5-ALAについても検討しています。
5-ALAは体内のヘム合成・ミトコンドリア機能に関わる物質で、糖代謝などに関するヒト研究も報告されています。
一方、現時点では、
5-ALAが糖尿病を完全寛解させることは証明されていません。
また、5-ALAを確立されたHDAC阻害剤や糖尿病根治薬として位置づけるものでもありません。
5-ALAは独立した研究候補として、 proposed cell stateとの機序的関連を検証し、適切なregulated development pathを選定すべき対象とされています。

NEXT-GENERATION TARGETED THERAPY
将来的には、糖尿病幹細胞を直接標的へ。
現在の治療仮説では、HDAC関連機序などへの介入を利用しています。
しかし、全身に作用する薬剤では、治療対象以外の細胞にも作用する可能性があります。
そこで将来的には、特定の細胞を認識するBiozipcode™を利用し、糖尿病幹細胞へより選択的に治療用分子を届ける技術へ発展させることを目指しています。
これにより、
標的細胞の識別
↓
治療用分子の送達
↓
標的外曝露の低減
↓
therapeutic indexの向上
につなげることを研究しています。









